太平洋岸自転車道はご存じ?目指せナショナルサイクルルート*延長約1400kmのサイクルロード

昨今のサイクリングブームでサイクリングを趣味や健康のためのアクティビティにしている方も多いのではないでしょうか。最近では各自治体の努力もあり多くのサイクリングロードが整備されてきましたが、「太平洋岸自転車道」というのはご存じですか?

サイクリングロードの多くは○○サイクリングコースや○○サイクリングロードといった地名や名称を当てはめたものが主流ですが、「太平洋岸」「自転車道」という規模も大きく、仰々しい名前のサイクリングロードはなかなか珍しいのではないでしょうか。

しかも「太平洋岸自転車道」について調べていくと、以前紹介のしたことのある「ナショナルサイクルルート」認定を目指しているようで、いかにして認定を取るのか、という視点からでも楽しめるものでしたので、紹介していきたいと思います。

太平洋岸自転車道とは

では、この太平洋岸自転車道というのはどういったものなのか?まずはプレスリリースなどで公開されている内容を見てみましょう!

出典:太平洋岸自転車道ナショナルサイクルルート指定推進協議会

太平洋岸自転車道とは、千葉県銚子市から神奈川県、静岡県、愛知県、三重県、和歌山県の各太平洋岸を走り、和歌山市に至る延長約1,400kmのサイクリングロードのこと。

1973年の国会答弁で構想表明してから約半世紀、財源不足で自転車専用道の敷設は遅れ、案内板や標識の設置も少ない状況が続いていました。そして壮大な構想も日の目を見ることなく、ぶつ切り状態のまま人々の記憶から忘れ去られようとしていました。

しかし、東京五輪・パラリンピックで来日する外国人観光客のさらなる誘致につなげようと、国交省や近畿地方整備局などが太平洋岸自転車道の沿線自治体と協力し、整備を加速する方針で一致。2017年5月に自転車活用推進本部を設置し、サイクリング環境の整備に向けた取り組みを本格化させました。

路面標示や案内板を20年3月末までに約400カ所新設する予定で、自動車との接触などの危険性が高い場所では注意を呼び掛ける看板も設置します。沿線の鉄道駅には、レンタサイクルや着替え場所を設けることも検討しているとのこと。

恐らく国内最長となるこの自転車道は太平洋岸6県にまたがる約1400kmのロングコース。サイクリングロードというよりは、本当に「自転車道」と呼べる距離ですね。もちろん1日~2日では走破することができず、そのためか、コース整備と同時に施設の整備も進めているようです。

オリンピック・パラリンピックに乗っかって(と言うと聞こえは悪いですが…)2017年から急加速で整備が進められているということは、賛否両論あるかもしれませんが、自転車技術先進国でありながら、自転車文化後進国の日本にとっては、大きな1歩であることは間違いないと思います。

では実際にどのように整備するのか、進捗状況はどうなっているのか?公式WEBサイトからの情報をもとにまとめていきます。

2020年までに実施する取組内容

まず公式のアクションプランは大きく分けて下記の5つのようです。この5つが達成されれば、道路の完成と言えるでしょう。公式WEBサイトが2019年12月に公開され、同時にアクションプランなども公開されたのですが、2017年の推進本部設置から公開まで約2年かかったということは6県にまたがったこの自転車道計画がいかに時間とお金のかかる計画なのだということが伺えます。

ナショナルサイクルルートの要件を満たす通行空間の整備

現在2020年3月末2020年夏
約60%約70%概ね100%

分岐部等に路面表示・案内看板を設置

現在2020年3月末2020年夏
0箇所約400箇所約820箇所

鉄道駅などに、レンタサイクルや着替え場所(ゲートウェイ)等を整備

現在2020年7月末2020年末
5箇所7箇所12箇所

サイクルステーションの整備

現在2020年末
約70%概ね100%

日英2か国語以上でのホームページ、サイクリングマップでの情報発信(ホームページ、サイクリングマップ 日本語版・英語版)

前提がナショナルサイクルルートとなっている点が興味深い。では早速この5つのアクションプランを詳しく見ていきます。

走行環境(自転車通行空間の整備)

現在2020年3月末2020年夏
約60%約70%概ね100%

自転車通行空間の整備とは、全長1481kmの道路に自転車道を設置することです。この自転車道というのは

①自転車歩行者専用道路(自動車が通ってはいけない道路)

②矢羽根(自転車と自動車を混在通行する道路に設置する青色矢印)

出典:埼玉県

③ブルーライン(主に和歌山県に設定されている混在通行する道路に設置されている青色のライン)

出典:和歌山県

このいずれかを設置した道路のことを言います。今後、整備されるものは矢羽根整備がほとんどで、自転車歩行者専用道路、ブルーラインは現時点で整備率は100%のようです。

ナショナルサイクルルートに照らし合わせると「誰もが安全・快適に走行できる環境を備えていること」に該当でしょうか。

走行環境(路面表示・案内看板の設置)

現在2020年3月末2020年夏
0箇所約400箇所約820箇所
出典:太平洋岸自転車道ナショナルサイクルルート指定推進協議会

正確には817箇所の路面表示や・案内看板の設置が新たにされるとのことですが、調べてみると、すでに各所に「太平洋岸自転車道」という看板などは設置されているようですが、統一されたデザインのものを新規設置するようです。

ナショナルサイクルルートに照らし合わせると「誰もが迷わず安心して走行できる環境を備えていること」に該当でしょうか。

ゲートウェイ

現在2020年7月末2020年末
5箇所7箇所12箇所

ゲートウェイには空港(1箇所)、鉄道駅(6箇所)、道の駅(3箇所)、その他(2箇所)、合計12箇所を予定しています。その他とは、神奈川県にある柳島スポーツ公園のような施設となっています。

ゲートウェイはレンタサイクルやシェアサイクル、物品購入、ロッカーや着替え、工具の貸し出しなど施設として単独でも運営できるような設備が必要となっているため、既存の施設にプラスしたものが多く見られます。

12箇所というのが多いのか、少ないのか、なんとも言えない数ではありますが、距離を踏まえると平均間隔で約100kmと考えると、今後、レンタサイクルなどでも「乗り捨て」ができると外国人旅行客などには受けが良いかもしれませんね。

柳島スポーツ公園(神奈川県)

出典:柳島スポーツ公園
出典:柳島スポーツ公園
出典:柳島スポーツ公園
出典:柳島スポーツ公園
出典:柳島スポーツ公園
出典:柳島スポーツ公園

ナショナルサイクルルートに照らし合わせると「受入環境」に該当でしょうか。やはりナショナルサイクルルートの指定要件のうち、受入環境が一番の課題点と言えそうです。

サイクルステーション

現在2020年末
約70%概ね100%

サイクルステーションとはいつでも休憩ができる環境(トイレ・空気入れ・ラック・情報取得等)のこと。ゲートウェイとは違い、既存の公園やカフェで運用が可能なようです。123箇所(平均間隔:約12km、最大間隔:約30km)のサイクルステーションを選定済みのようで、必要機能の整備はこれからとのこと。

ゲートウェイに比べ進捗率が高いことはそういった理由がありそうです。受入環境の中にある宿泊施設についても現在約90%が済んでいるようなのでサイクルステーション同様既存の施設を多く利用しているのですね。

大磯港(ポートハウスてるがさき)

出典:ポートハウスてるがさき
出典:ポートハウスてるがさき
出典:ポートハウスてるがさき
出典:ポートハウスてるがさき

こちらもナショナルサイクルルートに照らし合わせると「受入環境」に該当でしょうか。

情報発信

出典:太平洋岸自転車道ナショナルサイクルルート指定推進協議会

日英2か国語以上でのホームページ、サイクリングマップでの情報発信(ホームページ、サイクリングマップ 日本語版・英語版) を計画しており、ホームページは公開済み、今後よりアップデートしていくようです。

サイクリングマップは2020年3月に公開予定とのことですが、どこまでの情報が公開されるのかが楽しみです。(もう3月ですが)

恐らくルートメインでゲートウェイやステーションについてはまた今後となりそうですが、規模を考えるとムックくらいのボリュームで作った方がニーズが高まりそうです。

まとめ

ここまで調べてきましたが、ナショナルサイクルルートの認定というのはなかなか大変なようです。

ちなみにゲートウェイの数ですが、すでにナショナルサイクルルートに認定されている、つくば霞ヶ浦りんりんロードは2箇所、ビワイチは1箇所、しまなみ海道サイクリングロードは2箇所となっていますので、おおよそ100kmに1か所は必要なようですね。

またステーションはおおむね20kmごとに設置が必要なようで、距離が長い=設備の数が多いということです。

今後、200km以内のルートはナショナルサイクルルートとして認定に向け動く自治体も多いかもしれませんが、恐らくこの規模は今後も抜かれないほど最大のものとなりそうです。

ぜひ間に合わせの工事で終わらず、2021年以降もアップデートをしていっていただき、世界に誇るサイクルルートを作ってほしいですね!

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